文楽・菅原伝授手習鑑
昨日、国立文楽劇場「菅原伝授手習鑑」の通し、夜の部を拝見してきました。もう何年も前から昼夜通しで観るてなことはでけん体になってます。ケツが持たん。そんなわけで夜の部だけ。
竹本住大夫師の引退記念公演ですから、チケットは完売。私はなんとか売り切れ寸前にチケットを手に入れたのでした。その住大夫師は「桜丸切腹の段」。先年亡くなった越路大夫師も引退の時はこの桜丸やなかったかな? ええ加減な記憶ですが……。
気になったんで調べてみました。文楽はネットで上演記録がわかるのですね。すごい! 便利!
ちゃんと判明いたしました。1989年4月国立文楽劇場で同じく「菅原」の通しです。越路大夫師も「桜丸切腹の段」で引退してはります。おんなじなんや。
いよいよ住大夫師の出です。私の隣に座った女性は、同時にハンカチを出してきてしっかりと握りしめてはりました。もう泣く準備をしてるんや。
しばらくして隣を見たら……鼻をかんではりました。花粉症なのね。
私のお目当ては豊竹英大夫師の「天拝山の段」。落語の「牛ほめ」に出てくる「天角地眼一黒直頭耳小歯違ふ(てんかくじがんいちこくろくとうにしょうはちごう・途中から一石六斗二升八合の洒落)」がここにも出てくるのです。ま、落語のほうがパクったんやと思いますが……。
最後は菅丞相が火を噴いて雷神になって飛んで行くやなんて、めっちゃ面白いやないですか。私、ここは初めて観たような気がします。ええ加減な記憶ですが……。
また調べてみました。1989年の通しの時に「天拝山」は出てませんでした。おお、自分の記憶を褒めてやりたい。
最後は「寺子屋」。これも落語に関係が深い。「かかるところへ春藤玄蕃」。そう、「軒づけ」ですがな。この「寺子屋」は私、さすがに歌舞伎でも文楽でも何回も観てます。「せまじきものは宮仕へ」、これも落語に出てくる。わかるよね? 「百年目」ですよ。
豊竹嶋大夫師が昨日から病気休演で竹本千歳大夫師の代演。うるうるしながら拝見いたしました。しかし、代演とはいえ夜の部だけで二段も語るなんてたいへんやと思います。「寝床」の旦那は三十段語りますが……。一緒にするなちゅうねん。
よかったよかったで終わりたかったんですが、一つだけ、ちょっと聞いてくれはりますか。
前の席に座ってたおっさんのマナーの悪いこと。体が大きいというだけでも罪やと思うのに、じっとしてないんです。しょっちゅう動いて、そのたんびに私も動かんならん。
ごそごそごそごそしてるから、それだけでも嫌やなあ、と思てたらやりやがった。大きな屁を二発。周りに響き渡ってましたな。またこれが臭いねん。こんなひどい目に遭うたんは初めてや。それからわたしゃずっと口で息してましたで。
それはそれとして、ちょっと楽屋へお邪魔しました。いきなり人形の桐竹勘十郎師とすれ違って、無沙汰の詫び。また飲みまひょな。
そのあと英大夫師に御礼を言いに行きました。浄瑠璃の文句でわからなかったところを教えてもらったのです。それが何かということは、創元社の「米朝落語全集(増補改訂版)」の第五巻272ページ下段の2行目をご覧ください。演目は「どうらんの幸助」ね。これ以上は教えたげへん。
本を進呈したお返しにといただいた手拭をご紹介しましょう。早速、高座で使わせてもらおうと思てよく見たら、英大夫師の似顔絵が大きく描いてます。それもちょうど顔が出るように折りたたんであります。落語で使ったらお客さまから似顔絵がよく見えることでしょう。……どうしましょ?
この記事へのコメント
さすがグーはあるが プーは初めて 運悪い