偉大なりカセットテープ

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カセットテープがこの世に誕生してどれくらいになるのか知りませんが、私とのお付き合いが始まって……お付き合いと言うても結婚を前提のお付き合いではありません。あ、これは文之助兄のネタですが……。

とにかく中学生の時からですから、もう40年以上ですなあ。テープが何本あるかわかりません。ざっと数えて数千本あることはたしかです。落語、漫才、講談、浪花節、歌舞伎、文楽、狂言からエリック・クラプトンまで。

でもずいぶん前に新たにカセットテープには録音しなくなりました。DATやMDができて、デジタルのほうが音質がええとか言うて、こちらのほうへ録音するようになったからです。あ、今はMP3。

ところがどうです? DATは録音どころか再生するデッキもみんな壊れて、空しくテープだけ残ってます。MDもたくさんデッキやウォークマンがありましたが、今は小っちゃいMDウォークマンを1台残すのみ。これが壊れたら、もうこの世では再生できません。……あの世でも無理か。

でもカセットテープは再生できます。古いデッキはもう稼働しなくなったので、数年前、ダブルデッキを買いました。もう録音することはないにしても、残っている財産であるテープは最大限に活用できます。

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それにまた古いテープがちゃんと動いてくれるんです。テープが切れたりするトラブルがあってもなんとか修理して聴けるようにしてきました。40年前のテープが生きてるんですよ。我が屋根裏部屋の酷暑にも耐えて。昨日も室温40℃やもん。

と言うても、そんなにしょっちゅう使うことはなかったんです。ところが、去年の暮れからめっちゃカセットテープとカセットデッキを使うようになりました。創元社「米朝落語全集」の編集に関わったからです。いろんなテープ(当然全部桂米朝)を次から次へ聴きまくりました。早送り、巻き戻しを繰り返してまた再生……。

あかん、あかんよ。そんなことしてたら。テープに負担がかかるよ。30~40歳のテープが多いから。いつ切れるかわからへんよ。

そんな時、ふとネットで目に留まったのがこれ。カセットテープやその他の音源をCDに焼いたり、MP3に変換してくれるティアックのデッキ。編集の仕事をはかどらせるために、カセットテープの安全のために購入しました。これええわ。MP3をパソコンで再生したら早送り、巻き戻しが一瞬やもんねえ。もっと早うに買うといたら仕事がはかどってたやろうに。

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で、今は時間がある時に、古いテープの音源を聴きながら、重要なもの(私の好みですから深く詮索しないでね)はMP3でデータとして保存していく作業をしております。ええなあ、こういう作業。憧れの師匠連の落語を聴く。噺家を37年もやってますが、まだまだミーハーです。ことに大好きな師匠連はもうみんな死んでしまいはりましたから。……もとい、みんなではなくて、ほとんど。うちの国宝とか春團治師匠はもちろん存命です。

数日前、古今亭志ん朝師匠の「甲府い」を聴こうとしたわけです。MP3化の準備をしつつ。出囃子が鳴り出した途端、異常が……。早送り再生みたいな音がしたんです。やばい、めっちゃやばい。テープを巻き込んでる……。

なんとかデッキから取り出しましたが、テープが切れてる。この通り……。

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昔、よくやりました。テープが切れたら、中を開けてセロハンテープでつなげたり、ハブが壊れたら要らないテープを壊して、そのハブとつなげたり……。

久しぶりにやったろやないかい、テープとの格闘を。けどテープに指紋が付くのは嫌なので、まず白い手袋を買いに行きました。白い恋人は北海道土産やけど、白い手袋はどこに売ってる? 要らんこと考えんと、とりあえず大きなイオン洛南店で探しました。大き過ぎてどこに置いてあるかわからへん。尋ね尋ねてどこにあったと思います? 文房具売場にありました。

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まずカセットテープのビスをはずして中身を取り出し、巻き込まれて折れ曲がったテープを手袋をはめた手で丁寧に伸ばしていきます。よく見ると、テープが切れたんではなくて、ハブにテープを固定する部品が折れただけでした。プラスティックの劣化やね。テープは無事や。よかった。セロハンテープは要らないと判明。けど別のテープからハブを取り出さなくては……。

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さらの20分テープがありました。こいつには申し訳ないけど部品を使わせてもらいます。けどこのテープにはビスが付いてない。無理やりバリッとこじ開けてハブだけ取り出し、「甲府い」が入ってるテープとつなぎました。ものの5分とかかってない。腕は落ちてへんね。

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テープの巻き乱れを直して、側に納めます。テープの位置が間違ってないことを確認。あとは閉じてビスを締めるだけ。再生してみると、懐かしの志ん朝師匠のお声が流れてきました。テープが折れ曲がったところだけ音飛びが生じてるけど、これは仕方がない。想定範囲。ついでにMP3録音をしてデータ化完了。これにて一件落着。

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カセットテープは強い。カセットテープは偉大なり。

カセットテープの保存に関して一つだけ私が徹底してきたことがあります。聴く時は必ず両面再生して、ことにB面は早送り、巻き戻しをせずになるべく一気に全部を再生してから、ケースへ戻してきました。巻き乱れがある状態で放っといたことはなかったということです。少しはカセットテープにやさしく接してたでしょ?

あとは保存場所を涼しいところに移動するだけなんやけど……無理やね。

この記事へのコメント

初代杢兵衛
2014年06月02日 08:28
テイアックにそんな名機がありましたか。あと問題はレコードですねん
ジーやん
2014年06月02日 08:49
ティアックからはレコードプレーヤー付きのも発売されていますが、これはMP3には変換できないはず。それにカセットにドルビーが付いてないんです。そして、これより高い。場所も取る。それでこれにしました。レコードプレーヤーは現役で使えるので。
通りすがり
2014年06月03日 06:25
今回は不要だったようですが、切れたカセットテープを繋ぐのにセロハンテープはダメなんですよ。粘着材のせいで、さらなるトラブルを起こすことがあります。
昔は専用のテープを売ってたんですが、今では入手困難でしょうね。←あやり役に立たない情報ですみません。
ジーやん
2014年06月03日 21:09
ご教示ありがとうございます。どうやらテープはわりと丈夫で、ハブのほうがもろいみたいです。もう一つついでにカセットテープを直しましたが、こちらもテープは無事でハブの交換だけでした。

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