新しい扇子

これだけは高座へ持って出るのを忘れたら格好つかん、というのが扇子。手拭もですが。私のように扇子だけ手に持って出る人や、手拭と一緒に持って出る人、帯の間に差して出る人など人それぞれです。
亡くなった兄弟子の桂枝雀師は帯の間に差して出る人でした。手拭は懐へ入ってるので、手ぶらで出る訳です。座布団に座ってお辞儀をしてすぐに腰に手をやり、帯の間から扇子を抜いて、座布団に斜めに立てかけて置く、というのがお決まりでした。
あれは噺家になる前、お客で聴きに行っていた頃のこと。座ってお辞儀をして「しばらくの間、お付き合いを願います……」としゃべりながら、腰へ手を回し、右を探り、左を探り、あっちこっちを探ってましたが、急に黙ったかと思うと、舞台袖へ向かって、
「おーい、雀松。扇子を持ってきてくれ」
腰に扇子がなかったんですね。楽屋に忘れたという訳。すぐに雀松さん、今の文之助さんが駆け足で扇子を持って出て来はったのを、私ははっきりと覚えてます。もう大爆笑……。
私は手に持って出るので忘れたことはありません。……あ、手拭はあります。どうやってごまかしたかな?
滋賀県高島市まで行って、新しい扇子を買ってきました。同じ形のを三種。普通のものと煤竹(すすだけ)と焼き煤竹。煤竹がいつもより黒くて焼き煤竹とあまり変わりませんが……。
コロナで高座の数が減り、長いこと新しいのを買いませんでした。新しいのはしっかりしていて気持ちいいです。最近、使ってたのは要がゆるゆるになってましたから。今日の「ええああと@金剛能楽堂」で使い始めます。「火事場盗人」はあんまり扇子が活躍するところはありませんが……。
今日はうちの師匠、桂米朝の誕生日。生きてたら96歳ですか。気持ちよくしゃべってきます。最初はどの扇子にしようかな?
#すいた扇子
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