喫煙

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エリック・クラプトンは、今はお酒も煙草もたしなまない人ですが、かつてはアルコール依存症を経験し、またヘビースモーカーでもありました。煙草はステージで演奏中でも吸ってました。吸いかけの煙草をギターの弦とネックの間に挟んで演奏する姿は凄くかっこよく見えたものです。観客が拍手を送ったくらい。

うちの師匠、桂米朝と親友であった小松左京先生の二人に挟まれてバーで飲んでたことがありました。どちらもヘビースモーカー。ただタイプが全然違う。うちの師匠は根元まで吸うけど、小松先生は2服ぐらい吸うとすぐに火を消す。私の目の前の灰皿には、左のほうにやたら短い吸い殻、右のほうにやたら長い吸い殻が並ぶという妙な光景が見られました。

煙草を吸わなくなって33年経ちます。今、タバコを吸うのは落語の中だけ。私がやる噺では「持参金」「崇徳院」「猫の忠信」「仔猫」など。煙草の場面は視覚的演出にもなります。

言うときますが、煙草を吸いながらしゃべるシーンは難しいのです。煙草を吸いつける場面ではどうしても間が空いてしまう。火を点けて、吸って吐くという余計な間ができるのです。

うちの師匠から「持参金」を稽古してもらった時、煙草を吸う場面の極意を教えてもらいました。お客が笑っている時に吸いつけるのです。具体的に言うと、

「おなべという女子衆(おなごし)が居てたん、知ってるやろ。……不細工な女子や」

「金物屋の佐助はんに相談したんや」

コアな落語ファンならお分かりいただけるでしょう。この台詞でお客が笑っているあいだに煙草を吸いつけると、だらさずに噺を続けられるのです。参考になりましたか?

一昨日(6月10日)、NHKの「京コトはじめ」という番組の中で、落語での扇子の使い方を実演しました。筆になったり、箸になったり、刀や釣り竿など。当然、煙草も吸おうと思ったら、打ち合わせで煙草はNGと言われました。時代はそこまで来てるのですね。

私も今は嫌煙家です。近くで吸われるのは嫌です。歩きながら煙草を吸うてる人を見ると、引ったくって消したくなります。でも煙草を吸うことまで否定はしません。誰も居ないところ、もしくは喫煙室などで吸ってもらったらいいのです。でもコンビニの入口で吸うのはやめて欲しい。横を通るのですから。なんであんなところに灰皿を置くのでしょ?

それはそれとして、煙草を吸う場面は落語だけでなく、歌舞伎などのお芝居でも大事な演出として使われています。これからの時代はそれも否定されるかもしれません。そういうと、アニメの「君の名は」で女性が喫煙する場面が問題になったことがありました。

落語で煙草を吸う場面、これからは「カットしてください」と言われる時代が来るのでしょうか。今日「びわ湖浜大津寄席」で出している「百年目」でも煙草は重要な役割を果たしています。旦那が吸い殻を捨てる「コツーン」という音。これなんか隠れ遊びをしていた番頭の胸にグサリと突き刺さります。

NHKで煙草はダメと言われて、いろいろと考えてしまいました。

「京コトはじめ」は見逃し配信あります。たぶん17日(金)のお昼過ぎまで見ることができます。NHK+(プラス)でご覧ください。(老けた)桂米二が映ってます。

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